超高齢社会に突入している現在の日本において、介護現場での人手不足が叫ばれるようになっている中、サイバーダイン社のロボットスーツHALを筆頭に、介護ロボットは存在感を増してきています。

しかしながら、2010年から全国に先駆けて介護ロボットの普及事業に取り組んできた「かながわ福祉サービス振興会」の報告書によれば、実際のところ介護現場ではロボット導入が進んでいない実情があると、報じられてます。

過去にケアタイムズ新聞でも「介護ロボットが高額過ぎる」ことが普及の課題になっていると報じてきましたが、そこにはもう一つの理由があるようです。

"robot"

普及しない問題点の本質は何なのか?

ITmediaビジネスオンラインによると、介護ロボットの機能面において、現状では以下のように現場ニーズとの間に開きがあることから、介護ロボットは普及しないと報じています。

※例えば、介護現場で有効だとされているパワーアシストと呼ばれる装着ロボット。確かに人を抱えるときなどに効力を発揮するが、いったんそれが終わればすぐ装着ロボットを取り外して別の仕事に取り掛からなくてはいけない。取り外しに時間もかかる。だからといって、人を持ち抱えるような仕事だけをひたすらしていればいいということなどない。一機種のロボットにできることは限られており、部分的には役に立つが一日全体の仕事を通して考えると使い勝手の悪い製品になる。

遡って調べたところ、かながわ福祉サービス振興会では、2012年からすでに同様の指摘を日経デジタルヘルス上で行っていました。

※そして業務面の課題もある。製造業の工場などに導入する産業用ロボットに期待されているのは通常、標準化された業務を、ムリ・ムダ・ムラの低減を追求し ながら実行することである。一方で介護の場合は、業務の流れが画一的ではない上、必ずしも業務効率を追求することが歓迎されない。このような状況の介護現 場には、ロボットがすんなりとは入り込みにくいという実情がある。

この3年間、課題解決に向けて動くことはできなかったのでしょうか。

ニーズ不在、課題の解決に向けて動くには

この3年間でロボットスーツの性能は飛躍的に進化していますが、このような現場とのギャップは一向に埋まる気配がなく、むしろ広がっているようです。

記事中でも報じられているように、新しい技術の開発・商品化を目的としニーズ不在の開発を続けているだけでは、今後も介護ロボットの普及は見込めないとすら感じさせられます。

神奈川県は、ロボットスーツHAL等の特別養護老人ホームや有料老人ホームなど30施設で運用実証に取り組む覚書を締結するなど、特に介護現場でのロボット普及に力を入れています。

行政や自治体が先頭に立って実証実験を繰り返し、現場ニーズの吸い上げや運用面での課題解決を行うことが、介護ロボットの普及には必須だと考えます。

ロボット推進事業関係者が語る、「介護ロボット」が普及しない理由

第3回 介護ロボット普及への課題は何か