高齢者の脳トレ、刑務所での事例に見る認知症予防に向けた取り組み
これまでケアタイムズ新聞では様々な面や角度で「高齢化社会の問題や課題」を取り上げてきましたが、全国の刑務所でも同じように高齢化が課題となっています。
犯罪白書によると、2013年までの20年で65歳以上の受刑者は5倍近くに増え、更生だけでなく健康をどう保つかも重要となり、認知症予防などに乗り出す刑務所も出てきています。
大分刑務所での取り組み事例
大分刑務所の60歳以上の受刑者の割合は、法務省の統計などによると2013年末時点で20.8%と、全国平均の18.2%を上回っています。
こうした背景をふまえ、大分刑務所では2010年10月から、65歳以上の高齢者を対象とし認知症予防に取り組んできています。
具体的には任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」の脳を鍛えるゲームソフトを使用し、交互に隠される二つの数字の足し算や、正しく硬貨で釣り銭を渡す問題など、単純かつ多彩な出題を繰り返すゲームを使った「脳トレ」を実施しています。
認知症を予防する施策が急がれる
このような「認知症の予防」は刑務所だけに限らず、デイサービスの現場や老人ホーム、しいては社会全体の課題になっています。
政府の予測では高齢者の約4人に1人が認知症、又はその予備群としており、高齢化の進展に伴い認知症の人数はさらに増加すると見込んでいます。
そういった認知症高齢者の増加に対応する為に、政府が主導する「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」が今年度から始まりますが、その内容は「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す」となっています。
また、この戦略内では「認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等 の研究開発及びその成果の普及の推進」も施策の柱として定められていますので、認知症の人が過ごしやすい社会を作ることはもちろん重要ですが、「認知症の予防」にも力を入れて取り組むことも、同じくらい重要だと捉えています。
この「病態解明を通じての予防法、診断法、治療法等の研究開発」には、今年度に約65億円の予算が確保されていますので、今後は本格的に予防法の研究が進むのではないでしょうか。